当然ですが

『北海道の歴史』を読んだ。47都道府県の県史がそれぞれまとめてあるシリーズの一つで、程よく詳細に一通りのことが書かれていてよかった。

本州との交流について松前藩ぐらいしか知識がなかったのだが、本州と北海道は絶えず交流があったらしい。縄文時代の環状列石(ストーンサークル)は本州の東北地方から中部地方にかけて全国的にみられ、北海道でも道北を除いて各地で確認されている。『日本書紀』には阿倍比羅夫が北海道に遠征したという記事があるし、平安時代における北海道との交易を示す書物や出土品もある。北海道を通ってシベリア―サハリンから本州へ人類が入ってきたであろうことを考えれば当たり前だが、当たり前のことがしっかり分かった。

松前藩の時期の様子も面白い。シャクシャインの戦いのも前段にはアイヌ勢力間の抗争があるらしく、アイヌも一枚岩ではない。交易や漁を通しての搾取や虐待でかなりのアイヌが命を失った一方で、和人のもたらしたものを利用して経済的な独立を保ったり、和人に要求を通したりするアイヌもいた。

対する和人もそれぞれ立場が異なっていて、財政難に苦しむ松前藩は、交易等を請け負う商人に頭が上がらず、アイヌや出稼ぎ和人への搾取も見て見ぬふりをする。18世紀中ごろから、ロシア人が接近するようになっても、松前藩は幕府に事態を矮小に報告したり秘密にしたりして、政権側にも力関係がある。蝦夷地に様々な立場の人がいることも当然だ。

北海道の歴史を一通り学べたこともよかったのだけど、当たり前のようなことをなんとなくのままにしておかずにきちんと認識するためにも、色々勉強しておくことは大切だということが思い出せたのはよかった。ふんわりした世界を少しずつ確かな手ごたえのするものにしていきたい。