自愛しています

入院した。4年前にもなった回盲部炎という病気で、腸が炎症を起こしているらしい。腸を休ませながら病原菌?を取り除くために、ものも食べず一日中食事代わりと抗生物質の点滴を打っている。
携帯の充電器も持たずに病院に駆け込んでそのまま入院することになったので、早々に携帯は文鎮になってしまって読む本もなかった。昨日一昨日は寝ていないときはずっとテレビを見ているという具合だった。
普段からNHKはけっこう見る。病室でも100分de名著谷垣潤一郎特集とかブラタモリ網走編、筒美京平のドキュメンタリーを見ていた。
私がNHKというときはBSも含まれていることに気付いた。地上波のNHKだけだと間が持てず、民放の番組も見た。2.3回見たはずのハリーポッターや話題の鬼滅の刃を見てしっかりできてるなあと感心したりした。バラエティでは福井で自動車修理会社を経営するヤマンバギャルが取り上げられていた。閉鎖的な地元にあって自分で事業を営み、好きなもので身を固めている人がいるのかと思うと頼もしかった。
それにしても民放番組は慣れない。視聴者が反応すべき感情を効果音や出演者の反応で誘導してこようとするのが癪だ。こっちは飯が食えないのにグルメばっかり出してくるので腹が立つ。あと、とんかつDJアゲ太郎の宣伝がひっきりなしにやっていてこれがマッドマックスをネット以外誰も見てない現象の正体かと悟った。民放は公共の電波ではないという認識を新たにした。
病院というのも辛気臭いところだ。トイレに立てばどの部屋も具合の悪い老人が満載で、仏教的には見ておくべき世界の姿なのだろうが流石に気が滅入る。
そんな中、点滴のことは気に入っている。入院初日に針が入ってからつけっぱなしで、輸液の袋がかわるがわる繋がれていく。細菌など入らないように接続していく様子が人工衛星のドッキングのようで面白い。消化器官を使わずに直接血管に栄養を流し込んでるというのも臓器機能を外部化しているような感じがある。
身体が機械化している。
かっこよくなっている。
身体改造は拒否感があるのだけど機械の身体には憧れがあるので気軽に体験できてよかった。
お昼はおもゆと牛乳、リンゴジュースを飲んだ。まだ固形物とは言えないが口からものを入れて胃に送るというのは気持ちがいい。快感をいつも以上にはっきり感じる。
機械の身体ともすぐお別れだ。